起業には個人事業として始める場合と、法人を設立する場合の2つの形があります。ここではそれぞれについての必要な手続きや税金について、メリット・デメリットなどをまとめます。
個人事業主にするメリット
開業手続きが簡単
開業の手続きは税務署に開業届を出すだけですぐに手続きができます。
税務申告が簡単
個人事業主は年に1度、所得税額を計算する確定申告を行います。
税額の計算や確定申告に必要な書類の作成は、最近は簿記の知識が無くても簡単に入力できるソフトも発売されているため、処理もさほど難しくはありませんので自分で行うこともできます。
利益が少ないうちは税金が少ない
納税については、法人では法人税を支払い、個人事業では所得税を支払います。法人よりも個人事業の方が利益が少ないうちは税金は少額ですみます。利益額がいくらになれば法人にした方が節税になるかは事業によるようですので、詳しくは税理士に相談してしてみましょう。
個人事業主にするデメリット
社会的信用が得られにくい
個人事業主は法人に比べて簡単に開業できますので、社会的な信用を得られにくい傾向があります。業界に依っるかもしれませんが、私の仕事をしていた業界では法人のみしか取引をしない企業もありました。
また、運転資金などの融資の審査は厳しくなりやすく、融資が受けにくい傾向にあるようです。
利益が多いと税の負担が多くなる
個人事業主の場合は、利益が出るほど所得税の税率が高くなります。
個人事業主は法人に比べて、必要経費として認められる範囲が狭く、利益が増えれば増えるほど税率が上がるため、起業してある程度利益を確保できるようになるまでは個人事業で事業を行い、その後に税額の負担を考えて個人事業から法人化するというパターンが多いと思います。
法人にするメリット
社会的な信用が高い
法人は登記が必要で、会社法などの守らなければならない法律の規制が多く、それに基づいて運営するため、社会的な信用が高くなります。そのため金融機関から融資を受ける際や、取引先の開拓などは、個人事業主よりも有利といえます。
節税面でのメリットが大きい
個人事業主の場合の所得税は、収入から経費を差し引いた所得の全てにかかりますが、法人の場合は、収入の一部のみを経営者の報酬として、そこに所得税が掛かります。
法人は個人事業より必要経費として認められるものが多く、生命保険料、交際費、退職金なども計上できます。
そのため、節税面でメリットは個人事業主よりも大きくなります。
資金調達の幅が広がる
法人の場合は、損益計算書と貸借対照表が決算時に作成されますので、個人よりも会計管理が明朗であり、金融機関も融資判断が明確にできるため、資金調達の幅が広がります。
法人にするデメリット
会社を設立するには費用がかかる
株式会社を設立する場合は、登録免許税・登記簿謄本代などで25万円程度かかります。これらの費用は個人事業では発生しません。
赤字でも税金の支払いがある
個人事業主であれば、赤字になっった場合には所得税や住民税の負担はありませが、地方税である法人住民税の均等割を納税する必要があります。これはたとえ赤字であっても発生します。(小規模法人で7万円程度)
社会保険の加入が必須
法人は社長1人のみの場合でも、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入が義務となっています。従業員分の社会保険料の負担もあるため人件費の負担が大きくなり、経営に影響が出やすくなります。
個人事業主と法人についての比較表
(スマートフォンでご覧の時は表が横スクロールになります。)
個人事業主 | 法人 | |
---|---|---|
開業・設立手続き | 開業届を税務署に提出 | 定款作成し法務局に登記(25万円程度必要) |
責任の範囲 | 無限責任 | 有限責任 |
事業年度 | 1月から12月の暦年 | 会社自身が自由に設定できる |
税金 | 経費に認められる範囲が法人よりも狭い | 経費に認められる範囲が広いが赤字でも法人税7万円が必要 |
会計 | 確定申告 | 法人決算書申告 |
赤字の繰越 | 3年(青色申告の場合) | 9年 |
信用 | 取引相手が基準を設けていて取引できない場合がある。 | 取引相手、金融機関から比較的に信用を得られやすい。 |
資金調達 | 融資審査で不利 | 個人よりは有利 |
社会保険 | 5名までは社会保険の加入は自由 | 必須(社長1人の会社でも加入しなければならない) |
生命保険 | 所得控除 | 全額経費 |
個人事業と法人との違いをまとめましたがいかがだったでしょうか?
それぞれメリットもデメリットもありますので自分の考えるビジネスと考え併せてみてください。